認知症と在宅介護を考えるブログ

認知症高齢者が機能を回復させたカラクリを脳細胞の仕組みで解説

time 2016/09/28

認知症高齢者が機能を回復させたカラクリを脳細胞の仕組みで解説

寝たきり認知症高齢者が社交ダンスを踊れるまでに劇的に回復した理由とは?

治らないはずの認知症が、劇的に回復する例もある! 】こちらのブログで取り上げられているテレビ番組を、私も偶然視聴しました。

寝たきりだった認知症高齢者が「社交ダンス」をキーワードにして目に見えるほど症状が改善、最終的には旅行に行けるほど回復したのです。

この劇的な回復の裏には「休眠脳細胞が揺り動かされて目覚め、新しい脳の神経回路が構築された」ことが理由としてあげられます。

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人間の脳には大量の神経細胞(ニューロン)が存在します。このニューロンは母親のお腹の中にいる間にどんどん増えますが、出生後は数が増えることはありません。

出生後の赤ちゃんの脳は目に見えて大きくなります。ところがその中身は、脳神経細胞(ニューロン)を支援しエネルギー供給を行うグリア細胞です。

(ラットの実験では海馬(記憶に関わる脳の領域)の神経細胞が増殖することが確認されています。人間も同じように、出生後、海馬の神経細胞が増える可能性はあります)

人間の脳には1000億個とも呼ばれる神経細胞(ニューロン)があり、そこからシナプスと呼ばれる無数の手のようなものが伸びています。この手は神経細胞同士をつなぐ役割を持っていますが、完全には結ばれておらず、ごくわずかにすき間があります。この隙間は、シナプス間隙(かんげき)と呼ばれています。

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この手の先から「神経伝達物質」(セロトニンやコルチゾール、ドーパミン等)が放出され、それが別の神経細胞のシナプスによって受けとられます

ナトリウムイオンやカルシウムイオンがシナプスの先端に流れこむことで神経伝達物質がシナプス間隙をスムーズに通過、ふたたび電気信号へと変換されるのです。

電気信号→化学信号(神経伝達物質)→電気信号」の順で、電気信号(シグナル)が神経細胞のネットワークをもの凄い勢いで駆け回っていきます。

この電気信号、なにもない状態でも1秒間に1~5回程度発生しています。情報処理を緊急におこなう場合には、1秒間に500回以上も信号が送られることも。

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脳細胞から伸びたシナプスに電気信号が何度も通過することで情報が処理され、視覚や聴覚、嗅覚、触覚、思考、感情が働くのです。

脳細胞は過剰生産され、要らないものは切り捨てられていく

人の出生時に備わっている脳の神経細胞(ニューロン)ですが、出生後は大きく増えることはありません。ただ神経細胞をつなぐ手(シナプス)は1~3歳までの間に急激に増えますが、3歳以降は数が減っていきます。

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脳細胞を増やせるだけ増やした状態で生まれ、シナプスで脳細胞をつなげるだけつなぐことで、人としての「多様性」がうまれます。赤ちゃんはどのような環境にも柔軟に対応できるよう、神経細胞やそれに繋がるシナプスを最大限に広げているのです。「赤ちゃんは言語の天才、どんな言葉もすぐに覚える」と言われるのも、その柔軟性や適応力を表現しているのでしょう。

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赤ちゃんの脳は出生後、さまざまなことを学習していきます。はいはいからつかまり立ちを始め、やがてしっかりと自分の足で立って歩きはじめます。さらにトイレに行って排泄し、自分の手で食事を食べることも覚えます。言葉も出始めます。そのたびに脳細胞には電気信号が送られ、必要な神経回路だけが働き、不要なものは働かなくなります。

人間は大量にもつ脳細胞の中から、必要な回路だけを取捨選択しながら生きているのです。

無駄とも思えるほど大量の神経細胞(ニューロン)を生産し、成長する過程で必要のない神経回路を切り捨てていくのが脳の戦略です。

では使われなくなった脳細胞は死滅するのでしょうか? 医師によっては「死滅する」と記述している方がいる一方、そうではないと記述している書籍も見ました。使われない脳細胞の一部は死滅し、一部は休眠するのだと思います。

もし日常生活で使われない脳細胞が完全に死滅・消滅するのなら、リハビリには一切効果がないことになります。

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「社交ダンス」によって寝たきりだった認知症高齢者が旅行に行けるまでに回復したのは、それまで使われなかった休眠脳細胞が活性化したから。電気信号が休眠脳細胞とシナプスに流れ、その刺激によって新しい回路がひらかれたのです。

リハビリをするのは「休眠脳細胞を揺り起こし、新しい回路をひらくために必要」なのです。取材対象となった認知症高齢者の場合、若い頃夢中になっていた社交ダンスがその切っ掛けとなったのでしょう。

人間の脳には大きな可能性があると感じさせます。本当に素晴らしいことです。

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人によって将棋や囲碁、ウォーキング、プラモデルの組立などで休眠脳細胞が活性化するかもしれません。できるだけ本人が興味をもち「楽しい!」と思えることに取りくむと、幸せホルモンと呼ばれる脳内神経伝達物質セロトニンやドーパミンがどんどん分泌され、リハビリ効果が上がるかもしれませんね。

常識と言われることもある日突然覆される可能性もある

「脳細胞は認知症などで死滅すると、二度と再生しない」「脳細胞は出生後には増えない」ということは書籍やネットで調べたことですが、私が常識と思っていることが、ある日突然覆されることもあります。

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ネットでの調査では、一度死んだ脳細胞を再生させる技術が開発されているそうです。フェーズⅢ段階まですすんでいるのなら、死滅した脳細胞が復活するのも時間の問題でしょう。また「出生後に脳の神経細胞が増える」と主張しているサイトもありました。脳の世界は「まだ良くわからないこと」が多いのも事実です。

病気の原因も脳の世界も「まだ良くわからないことが多い」という事実・現実を考え、今ここで解説していることが絶対的に正しいわけではないことを明記しておきます。 

「良くわからないこと」が多い人間の脳――2013年4月にアメリカで「BRAIN Initiative(ブレイン・イニシアチブ)」と呼ばれるプロジェクトが始動したばかりです。すべての神経細胞(ニューロン)の働きを解明するためには長い時間がかかりますが、研究によって脳の病気が劇的に治る日が来るかもしれません。大いに期待しましょう!

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